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2021-10-20
秋食記:蘇州の秋、味覚の記憶

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蘇州では秋の訪れをカレンダーで知る必要はない。 窓の外にある丘や森の紅葉がいち早く秋の訪れを教えてくれる。 まず、最初のシグナルは金木犀の花がちらほら咲き出しだすし教えてくれる。

洗練された生活スタイルを持つ蘇州人は今でも“旬の食材”を楽しむ習慣を保っている。 お腹を満たすだけではなく、食材の持つ味の記憶を蘇州人は忘れる事はないのである。

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蘇州の秋は金木犀の香りが街を包み、黄葉彩りを加え、気候は穏やか、そして秋は素晴らしい美食の時期でもあるのです。

晩夏“蘇州紅”——水紅菱

秋入り後、蘇州の食卓では“水八仙”と呼ばれる食材が度々出てきます。“水八仙”とは水八鮮という事で、マコモタケ、レンコン、セリ、オニバスの実、菱など8種類の食べられる水生植物の事を指す。蘇州では菱の品種がとても多く。その中でも特に有名なものが“蘇州紅”と呼ばれる水紅菱である。 新鮮な水紅菱の殻は薄く柔らかく水分がたっぷりで、爽やかな味わいで食感がとても良い。 おやつ代わりに食べる人が多く、生で食べても良く、栄養価が高い。 調理方法は沢山あり、一番シンプルなのは水煮で、煮えてくると紫銅色が鮮やかにあらわれてき、爽やかな甘味と粘り気と、旨味が出てきます。 新鮮な水紅菱に最も合うのは炒めもので、また熟した物は水分が少なく、でんぷん質になっているので、肉などと一緒に炒めたものがおすすめである。

蘇州呉中地区の良質な水と土は水紅菱にとって最高の環境で、成就期になると人々は小舟に乗り、ゆったりとした時間を楽しみながら、菱採取を楽しむ。 作業風景は仕事のようには見えず、風流な舟遊びの趣向を忘れていない。

写真by:劉思宇

早秋限定ーーオニバスの実

鳥頭米とも呼ばれるオニバスの実は、沼や池などの浅い水中で育つ。実は丸い球形で、先端が突起しており、鳥の頭に見える。補気健脾や滋養・強壮の効能がある。 オニバスの実は時期が限定的で、1年で2ヶ月の間しか売られていない為、この時期を逃すと来年まで待たないと食べられないので、毎年秋口になると蘇州葑門横街では沢山の売り子が一生懸命に販売している様を見ることが出来る。

蘇州には沢山のオニバスの実の調理方法があり、水煮、お粥、炒めなどそれぞれ違った味わいを楽しめる。 最も簡単かつ正式な調理方法は桂花糖水煮で、茹でた実に氷砂糖を入れ、金木犀を加えただけもので、香り高く歯ごたえがあり美味しい。

写真by:哎咦呦喂喂

中秋の味——蘇式肉月餅

蘇州人が愛してやまない食べ物の一つである肉月餅は、まさしく中秋の味。 月餅の丸い形は団欒と和睦の象徴である。 毎年中秋前後、蘇州老舗点心で有名な黄天源や長髪西餅店では、門の外まで長い行列が出来、この季節の風物詩となっている。 焼き揚がったばっかりの肉月餅は皮がこんがりとパリパリで、中には肉汁が程よい。 熱々を食べると、肉汁がパリパリの皮と混ざり、病み付きになる。

現代人のテイストに合わせ、月餅にも様々な新しい味が出てきているが、肉月餅は蘇州人にとって思い出の扉に強く繋がっている。初恋の恋人を待つように、オーブンから出てくる肉月餅を待ち、家族とその味を楽しむ時間は、濃厚な思い出となる。

秋の採れたての味——陽澄湖のチュウゴクモクズガニ

秋日の食事を最もエキサイティングにしてくれるのは、もちろん蘇州陽澄湖のチュウゴクモクズガニである。 10月に入ると黄紅殻のメス蟹が市場に上がり、次にオス蟹と昔から決まっている。 この蟹は蘇州人だけではなく多くの人々からとても愛されている食材だ。 もっとも最適と言われている調理方法は清蒸で、食べる時に少量の生姜、砂糖、大蒜などを醋に混ぜてたべるのが、蟹の持つ寒気を和らげつつ最も美味しい食べ方だとされている。 蒸には特段技術は必要なく、素人でも簡単に作れるのが、チュウゴクモクズガニがここまで人気になった一つの理由である。